研究紹介&インタビュー|D1 名合編(水素同位体分離)

こんにちは、ブログ担当の亀水です。

連載記事第三弾は、M1の名合君へのインタビュー記事です。

 

それでは、早速始めていきます!

~目次~

  1. 研究内容のご紹介
  2. 研究の面白さ・大変さ
  3. 研究をするにあたり、必要な知識
  4. 後輩へメッセージ

 

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研究内容のご紹介

亀水
こんにちは!ワカサギ釣り中、失礼します。今日はどうぞ、よろしくお願いします。
名合
こちらこそ、よろしくお願いします。
亀水
早速ですが、名合さんはいま、どのような研究をしているのでしょうか?
名合
はい、私は燃料電池を使用して水素と水素同位体を分離する研究を行っています。
亀水
なるほど、詳しく教えて下さい。
名合
2011年に発生した福島第一原発事故により、重水素や三重水素(トリチウム)を含む汚染水が大量に発生しました。昨年(2021年)、政府の決定により汚染水が海中放出されることが決定されましたけれども、私の研究を応用すれば、汚染水を限りなく安全な状態にしてから海に戻すことができるようになるかもしれません。
亀水
つまり、汚染水中に含まれた水素同位体を分離・回収するという事ですね?
名合
そういう事です。”ただ同位体を回収するだけではなく、どうせなら発電までしてしまおうじゃないか!”というのが私の研究のコンセプトです。燃料電池の仕組みを利用すれば発電と同時に有害物質が濃縮された水(D₂O, T₂O)が回収できますので、まさに一石二鳥を狙った研究を行っているというわけです。
亀水
面白いですね~!!
名合
へへっ、ありがとうございます^^。それに、高純度のトリチウムは核融合に必要となります。実用に適した核融合炉はまだ開発されていませんが、もし実現すれば、CO₂を排出せず、火力発電より圧倒的に大きなエネルギーを得られるようになります。例を挙げると、核融合では、水素わずか数グラムから石油数トン分にもおよぶエネルギーを入手できます。
亀水
数トン分ですか?それはすごい!最近水素が脚光を浴びている理由がよく分かりますね!
亀水
現在進行形で問題となっている汚染水処理にもつながり、環境志向の未来型発電にも間接的につながっている…。名合さんの研究内容は、基礎研究でもあり応用研究でもあるという、大変興味深いテーマですね。
名合
そうですね、いつも大変楽しく研究を行っております^^
亀水
では次に、名合さんの研究の面白さですとか大変な点について質問して参ります。よろしいですか?
名合
はい、お願いします!

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研究の面白さ・大変さ

亀水
では、研究の面白さについてお伺いします。名合さんの研究の魅力はどんな所にありますか?
名合
私の研究の魅力は2つあります。一つ目は、先ほど亀水さんが言っていたように、近年注目度が急上昇している水素を扱えることです。
亀水
なるほど。
名合
水素エネルギーは、温室効果ガスであるCO₂や大気汚染物質である硫化物を出さない究極のクリーンエネルギーであるため、環境問題を解決するキーアイテムとなります。また、いずれ核融合炉が完成すれば、電気に不自由しなくなる時代がやってきます。
亀水
電気代が無料に近いほど安くなればいいですよね!そうすれば、電気代の高さゆえに避けられていた日本国内でのアルミ生産が可能となるし、電気自動車に関してもビュンビュン走らせることができるようになりますし!
名合
そうですね。国内で余った電気を発展途上国に送電できれば、貧困層の生活環境向上にも繋がってくると思います。
亀水
二つ目の魅力は何でしょうか?
名合
やはり、自分の日々取り組んでいる実験が社会問題の解決に直接関っている所です。自分の研究成果が社会実装されていく過程にも携わる事が出来ます。
亀水
それは本当に面白そうです。The・応用研究って感じで、私のやっている基礎研究とは大違いだなぁ…
名合
私の研究も大宅君のと同じで、実験の方向性が非常に明確です。その点に関しては実験のしやすさがあるかなと思います。
亀水
では逆に、名合さんの研究の大変さって何なのでしょうか?
名合
大変な所は2つあります。①実験に時間がかかる事と、②ガスを扱っているため実験装置内でどのような現象が起きているのか考察が難しい所です。
亀水
なるほど、詳しく聞かせて下さい。
名合
まず①に関してですが、一つの実験は基本的に数時間程度のスケールで行われます。なので、一つの成果を得るためにどうしてもかなりの時間を要してしまいます。
亀水
再現性を確認するために何度か実験を繰り返さなきゃいけないし…
名合
そうなんです。ひとたび実験を始めたら”待つ”か”実験が成功するよう祈る”ぐらいしかできませんから、実験の長さという点に関してまず大変さを感じます。
亀水
②に関してはいかがですか?
名合
アノード反応/カソード反応ともに、装置の中で反応が起こります。我々実験者は質量分析計(Q-mass)から得られたデータをもとに装置内部での現象を考察するしかないので、固体や液体を扱うのとはまた違った難しさがあるのです。
名合
さらに、電極反応に限らず、システム全体で何が起きているか、まだよく分かっていない所も多いのです。ですから、その点に関しても今後検討していく必要がありそうです。
亀水
そうなんですね。私はリチウム電析のリアルタイム観察をやっていて、目視による観察とデータを用いた考察を両方行えます。そうした面では、名合さんの実験には特有の難しさがあるみたいですね。
名合
反応の様子をリアルタイム観察できれば一番良いのですが、装置のセッティング的に難しいので、先行文献をベースに(あーでもない, こーでもない)と色々と頭を悩ませている所です。

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研究をするにあたり、必要となる知識

亀水
それでは、ここからは、研究を進めるのに必要となる知識についてお伺いします。燃料電池を用いた水素同位体分離を行うにあたり、どのような知識が必要となりますか?
名合
高校で習う電気化学的な知識があると良いと思います。ウチの研究室の研究テーマに共通して言えることだと思いますが、酸化還元や電気分解など、電池反応にかかわる知識は不可欠ですね。
亀水
他には何が必要ですか?
名合
化学量論的な議論もしますので、モルの概念をきちんと理解しておいて欲しい所です。逆に言えば、モルをはじめとした高校化学の知識+松島先生の授業の知識が身に付いていれば、少なくとも研究のスタートラインに立つ事は可能だと思います。
亀水
応用マテリアル工学コースの授業カリキュラムには水素に関する内容が入っていませんけれども、いきなり研究室で研究をやっていけるでしょうかね…?
名合
もちろん、完全に何も知らないままでは実験を始められません。しかし、私もそうでしたが、研究に必要な知識は手を動かしながら適宜学んでいけば大丈夫なので、そこの所はどうぞご安心下さい。
名合
私もまだまだ勉強不足なので、一緒に勉強していければと思っています。それに、水素分野はまだ未解明な点が多いので、一緒に真理を探求してくれる仲間を募集しています。
亀水
安心しました^^
亀水
では、研究を進めるにあたり、知識以外で必要となるスキルはありますか?
名合
はい、計画性論理的思考力が重要になると思います。
亀水
一つずつ教えて下さい。
名合
はい、まず計画性についてです。研究室に配属されると、実験以外にも学会発表の準備や後輩のお世話など、様々な仕事が増えてきます。面倒臭がって後回しにしてしまうとのちのち自分の首を絞めることになりますので、優先順位をつけて一つずつ着実にこなしていく能力が求められます。
名合
次に論理的思考力についてですが、研究はただ実験をやればいいというものではありません。いくら一生懸命時間をかけて実験をしても、そもそもの仮説が原理・原則と反するものであったならば、努力はすべて水泡に帰してしまいます。また、

  • 実験条件はコレで最適なのか?
  • 他にもっと良い方法はなかったのか?
  • 結果と考察に矛盾はないか?

など、様々な観点から絶え間なくロジカルに検討する力が求められます。私は研究室に配属される前はあまり物事を深く考えてきませんでした。しかし、研究を進めるにつれ、少しずつ論理的思考力が高まってきたように感じています。今後もこの能力を伸ばし、自分の一つの強みにしたいと考えています。

亀水
なるほど、論理的で分かりやすい説明でした。
名合
ありがとうございます笑

 

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後輩へメッセージ

亀水
では最後に、今後環境材料学研究室に配属される後輩に向けて何かメッセージをお願いします。
名合
大学院修士課程に進むことを前提とすると、研究室では最低でも3年間、研究活動を行う必要があります。コアタイムの有無や研究室の雰囲気も研究室選びの重要な要素ですが、少しでも研究内容に興味のある研究室を選ぶと幸せな研究室ライフを送れると思います。
名合
環境材料学研究室では、水素の研究だけではなく、腐食や電解精錬、次世代蓄電池など、様々なテーマの研究が日々進められています。電気化学に興味のある方なら、きっとどのテーマを選んでも楽しく研究していけるだろうと思います👍
亀水
本日は色々とありがとうございました!
名合
こちらこそ(*≧▽≦*)

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