こんにちは、ブログ担当の亀水です。
連載記事第四弾は、M1の本多君へのインタビュー記事です。
それでは、早速始めていきます!
~目次~
- 研究内容のご紹介
- 研究の面白さ・大変さ
- 研究をするにあたり必要な知識/スキル
- 趣味について
- 後輩へメッセージ
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研究内容のご紹介
こんにちは、今日はどうぞ、よろしくお願いします!
こちらこそよろしくお願いします。
早速ですが、本多さんは今、どのような研究をしているのでしょうか?
私は、水素製造装置での使用を目的とした、アルカリ溶液中でのステンレス鋼の耐食性の研究を行っています。
なるほど、詳しく聞かせて下さい。
近年、環境に優しい燃料として”水素”が注目を集めています。水素の製造法の一つにアルカリ水電解というものがあります。これはKOH aqなどのアルカリ水溶液を電気分解(2H⁺ + 2e⁻ → H₂)する方法で、水素を安く・大量に製造できるポテンシャルを秘めています。しかし、欠点として、溶液が電解槽内部を腐食させてしまうという問題を抱えています。
溶液の導電率を向上させるためにKOH濃度を上げると、それが原因で腐食も加速してしまうというわけですね?
そうなのです。電解槽がダメになってしまえば水漏れ等が発生して危険ですから、材料の腐食挙動を詳しく調査しておく必要があります。
私は日々、電解槽材料として想定されているステンレス鋼をアルカリ溶液中に浸漬させ、どのぐらいの時間が経過したらどのように鋼を構成する金属が溶解するかを研究しています。この研究が進み、アルカリ水電解によって燃料としての水素を安定供給できるようになれば、温室効果ガスによる環境問題は大きく改善されると考えられます。
あまり派手さはないかもしれないですが、将来のエネルギー問題の根幹を支える非常に重要な研究ですね。いくら燃料電池車を走らせたくても水素がなければ動かせられないし、本多さんの研究によって水素社会が実現する訳ですね。
水素社会実現には、水素の輸送や貯蔵など、まだまだ多くの壁を超えねばなりません。ただ、それ以前に水素をコンスタントに作れなくては話が始まりませんから、私は水素社会創造のための最初の課題を解決すべく研究を進めています。
なるほど、分かりました。次に、本多さんの研究の面白さや大変な所についてお伺いしてまいります。
はい、お願いします。
研究の面白さ・大変さ
では、研究の面白さについてお伺いします。本多さんはどんな所に研究の魅力を感じていますか?
やはり、様々なデータを取っていく中で、論理的に筋の通った考察が完成した時はすごく面白いなと思いますね。私が実験するまではその仮説が世に知られていなかったわけですから、”何か新しいもの”を生み出している実感があり、研究に対して大きな魅力を感じています。
他には何かありますか?
私が取り組んでいる腐食には、様々な反応や理論が関係してきます。ですので、それらをパズルのように組み合わせて真実に近づいていこうとする所にも、少なからず面白みを感じています。
そうですか。では、研究をしていて興奮する時ってどんな時ですか?
他の人には見えない世界が見られた時です。見た目にはほとんど変化していないように見える試料も、様々な分析を行う事で状態が変化している事が確認できます。本当にごく僅かしか腐食しない時もありますが、そうした変化であっても構造物などの強度には甚大な影響を及ぼす場合があるため、(自分の研究が役に立つかもしれないな)と朧気ながら考えて、日々実験に取り組んでいます。
なるほど、そうしましたら、研究の大変さについて教えて下さい。本多さんの研究の大変さはどこにありますか?
私の研究には2つ、大変なポイントがあります。一つ目は実験時間、二つ目は稀に生じる機械トラブルですね。
詳しく聞かせて下さい。
はい。まず実験時間についてですが、腐食実験は一度に100時間程度の長い時間を要します。したがって、(こういうデータが欲しいな~)と思ってもすぐには得られず、事前にしっかりと実験計画を立てておかないと悲惨な事になってしまいます。
また、せっかく100時間待ったのに、機械トラブル等により、データがうまく測定できていないケースがあります。試料自体はちゃんと腐食していても、その状態変化に付随する電流/電圧値がとれていなければ再測定する必要があるため、そこが私の実験テーマの大変さだと思っています。
それは大変ですね~。中でも特にハードだった場面について教えて下さい。
はい。昨年(2021年)、腐食時間をパラメータとした時の表面状態の違いを観察した事がありました。5時間→10時間→25時間→….→200時間と徐々に実験時間を長くしていったのですが、(いったいいつ終わるんだよ…笑)と苦笑いするほどしんどかったです。
もちろん、1回しか実験しなかったわけではないですものね?
そうです。いくら時間がかかるとはいえ、再現性を確認しておく必要がありますから、何度か繰り返し実験し、精度を確かめておく必要があったのです。
生活リズムがやや不規則になり、少しストレスもたまってしまいました。どうしても辛くなった時は、北大の近くにある家家家(ヤーヤーヤー)というラーメン屋さんでおいしいラーメンを食べ、エネルギーをチャージしてどうにか壁を乗り越えました。
なるほど、ではラーメンと研究はどちらが好きですか?
良かったです^^。
では次に、研究をするにあたり必要となる知識について聞いてまいります。
では次に、研究をするにあたり必要となる知識について聞いてまいります。
研究をするにあたり必要となる知識/スキル
本多さんは腐食に関する研究をしているわけですけれども、腐食挙動を調べる上で必要となる知識はありますか?
電位-pH図に関する知識が必要です。この図に関しては応用マテリアル工学コースの熱力学系の講義でも何度か習ったと思いますが、腐食と電位-pH図は切っても切れない関係にあるのです。
私の腐食実験では、電位 (縦軸) やpH (横軸) を変数とします。電位-pH図とは、”ある条件の下で存在する物質の状態”を教えてくれるものですから、腐食機構について考察する際、非常に重要となるのです。
なるほど。そうしましたら、研究を進めるにあたり必要なスキルはありますか?
長時間の実験が基本なので、一つの結果をじっくりと追い求める忍耐力が必要です。また、異なる金属 (合金) の腐食挙動を比較する際には様々な測定条件を統一する必要があるため、実験を進める丁寧さ/慎重さといったスキルも重要なのではないかと思います。
腐食実験に適性のある人はどんな性格の持ち主ですか?
“どっしりと腰を据え、丁寧に実験ができる人”ですね。そして、腐食メカニズムは非常に複雑であり、まだまだ未解明な部分も多いので、”物事を整理して考えられる人”が腐食研究向きだと思います。
腐食というテーマに限らず、環境材料学研究室に配属されるにあたり、研究室生活開始までにやっておくのをオススメする勉強はありますか?
特にありませんが、強いて言うなら、電気化学に慣れておくのが大事かなと思います。というのも、我々の研究室では電気化学の研究をしている人が大半なので、高校化学や学部時代の熱力学系の講義を復習しておくと、スムーズに研究へ移行できると思いますよ。
趣味について
色々お聞かせ下さりありがとうございます。話を聞いていて、本多さんって研究大好きなんだなぁという印象なんですけれども、研究していない時は何をしているのですか?何か趣味はありますか?
はい、私はスポーツ観戦が大好きです。
どんな種類のスポーツを観るのですか?
野球とサッカーがメインです。他にもいろいろ観ますよ。特に、ワールドカップやオリンピックみたいな世界大会の時には、あまりよく知らないスポーツでもとりあえず観てしまいます。最近はYouTubeやDAZN等の動画サイトでハイライト集などを手軽に観られますので、ヒマな時はスポーツ観戦して英気を養っております。
好きなスポーツチームはありますか?
スポーツチームというより、選手個人を好きになり、そこから逆にチームを好きになっていく場合が多いです。最近ではメジャーリーグで大谷翔平選手が大活躍し、それをキッカケにエンゼルスのファンとなりました。
スポーツ観戦の魅力について教えて下さい。
信じられないようなスーパープレイにあっと驚いたり、得点したときに盛り上がったりするなど、様々な感情を味わえるのが魅力です。スポーツには様々な戦術やセオリーがあるので、(選手がどのような事を考えているのか) や (チームとしてどういった狙いで動いているのか) を考えて観戦するのもなかなか面白いと思います。
そうやって頭を使いながらスポーツを観ていれば、研究に役立つ力も養えそうですね。
そうですね。スポーツ観戦のおかげで分析力や論理的思考力が高まったように感じています。また、目まぐるしく変わる場面に頭を追いつかせようと頭の回転数を上げた結果、学会やゼミ発表等の質疑応答で今までよりスラスラと返答できるようになりました。
それは素晴らしいですね^^。ちなみに、実際にスポーツをするのは好きですか?
好きです。ただ、最近あまり運動していないので、体がなまってしまっていて大変です笑。研究室仲間とはたまにバドミントンをしてリフレッシュしています。
でしたら、今度一緒にランニングしましょう。年末、100kmマラソンに出るのですが、本多さんも出場してみませんか?
いや、遠慮しておきます笑。
後輩に向けてメッセージ!
では最後に、今後環境材料学研究室に配属される後輩に向けてメッセージをお願いします。
研究室を選ぶ基準は人それぞれだと思います。研究内容が面白そう、この先生についていきたい、雰囲気が何となく自分好みなどなど、色々あるかと思います。
学部4年生からは研究室での生活が大部分を占める事になるため、じっくり考えて納得のいく選択をすると良いと思います。もし環境材料学研究室に来てくれたらしっかりとサポートするので、(電気化学をやってみたいけどできるかどうか不安…)という人も、どうぞご安心下さい。
本日は色々とありがとうございました!
こちらこそ(*≧▽≦*)